はじめてご来店いただく皆さまへのご案内

サイクルビギナー辞典

レース観戦にも役立てよう!知っておくと便利な解説辞典 サイクルビギナー辞典

ハートレート

直訳すると心拍数。その心拍数を測るのが心拍計で、英字では略してHRM。ハートレートモニターと呼んだりもする。体力アップ、あるいは健康管理のために今では欠かすことのできない機材のひとつだ。

ここでは、ロードバイクに乗る時に関係してくるこの心拍計について取り上げてみよう。

心拍計は便利そうだけど、どう使えばよいのかわからない、なんて話もよく聞きますから、これから心拍計を使ってみたいとか、興味のある方に向けて少し詳しく書いていきます。

心拍計は、心拍数のモニターと訳されているように、心臓の鼓動回数が心拍数値としてレシーバーに表示されたもので、その数値を基にして適正なトレーニングを行うのがこの機材の正しい使い方。一昔前までは、心電図の波形でもみなければ自分の心拍数の変化などわからなかった。ましてや、それをトレーニングに活用しようなどという考えも国内ではまだ一般的ではなかった。

それが今では誰でも手軽に時計を見るような感覚で、心拍数値をタイムリーに知ることが出来るのだから、体力アップを望むならこれを利用しない手はない。効率よく体力を伸ばしていくには、自分自身の身体能力の推移を知ることのできる心拍データをチェックするのが一番の近道だから。

しかし、間違っても、時計と同じような形をしているからといって、表示されている数値の意味も知らずに時計代わりのように使ってはいけない。

では、なぜその表示されている数値が大事なのか?

心拍数とは、心臓が収縮して全身に血液を送り出す際の1分間の収縮回数。心拍計は、その収縮の時に発生するパルス信号を、胸に付けるトランスミッターの2箇所の電極で受け電波に変えてからレシーバーで受信している。しかし、1分間の収縮回数といっても、実際に1分間測定したあとに表示させているわけではない。

これはサイクルメーターのケイデンス機能と同じように、表示されているその時のわずか数秒間の収縮スピードを1分間に換算した場合のいわば擬似数値。擬似とはいっても、もちろん正確な数値。この数秒間の計測時間はメーカーによって違うと思う。
(ちなみに、リスト型心拍計が出始めた当時、医療機器メーカーN社の製品や、サイクルメーターに心拍機能を搭載したC社の製品は、小刻みに数値が変化しすぎたり、変化する数値の差が大きかったり、心電図をそのまま数値化したような表示であまりトレーニングに使える代物ではなかった。P社の製品は当時から計測数値が一定表示で使いやすかったから、店長は今もP社の愛用者)

心拍計を使用するうえで一番大事な心拍数値の意味について、もうちょっと深掘りしていきます。

その前に、まず、なぜ心臓は収縮の回数を変えるのだろうか。これは、筋肉が産生するエネルギーごとに必要な栄養素を血液を介して速やかに供給するためと、同じく血液を介して、エネルギー代謝の副産物である疲労物質を酸素で速やかに体外へ除去するため。運動強度によって変化するこれらのサイクルに最適な対応をするために、心臓もまた瞬時にその収縮のスピードを変えている。

そして、心臓から全身に血液を送りだすときに、収縮回数を増やす前はドクンと1回送り出すごとの血液の量を多くして対応しているのだけれども、それが間に合わなくなりある一定の量を超えたときに、今度は回数を増やして対応しようとする。どんどん数値も上がってくる。運動強度によって変わるこの収縮回数、いわゆる心拍数を、どのような目的の数値として捉えるか、そこが大きなポイントなのだ。

例えば、運動強度が上がるにつれて心拍数も少しづつ上昇していく時に、最初に急上昇するところがある。大抵はこの心拍数値以上がLSDレベルでのトレーニングが望ましい強度となるはずだ。まだ低い段階の心拍だからそれほどつらくもないし、これは心拍測定をしてその推移を見てみなければ自分ではわかりづらいかもしれない。

でも、このように、運動強度が上がっていくに従い、その強度ごとに捉えておく数値がとても大事なのである。運動強度ごとに目標数値を設定しておかなければ心拍計を使う意味がない。自分は何を目的としてどの部分の代謝機能を養っていきたいか、これから心拍計を利用する方は、このことをよく理解してから使用することが大事だと思う。

ちなみに心拍数と脈拍数はほぼ同じ数値と捉えても構わないけれども、脈拍数を測る脈拍計は運動強度の高いスポーツには馴染まないので、ロードトレーニングにはやはり心拍計のほうを利用したい。

さて、次に、トレーニングで気をつけるべき点に触れてみよう。

これまで述べてきたように、心拍数は自分の体のバロメーターとして、現在の疲労具合や体調なども正確に教えてくれる。普段の体調管理にももちろん役立つけれども、スポーツ選手が利用する目的は主にトレーニングの時。トレーニングメニューをこの心拍数を基本にして、どの運動強度で行っていけばよいかはすべて心拍計が教えてくれる。これがいわゆる心拍トレーニング。

心拍トレーニングは、設定心拍数さえ間違っていなければ実に簡単かつ合理的なトレーニング方法だ。誰にでも手軽に行うことができる。もちろん、ロードバイクはまだ日が浅いという初心者の方にも、心拍計は効率よく体力を上げていくためにはおすすめの機材。

ただ、目的とする強度の心拍数をどう設定するかが心拍トレーニングでは一番大事なこと。この設定強度を間違えると、トレーニング効果が弱まったり、あるいは逆に、オーバートレーニングの原因ともなりかねない。心拍計は誰にでも体力アップに役立つ機材ではあるけれども、トレーニングの時は設定数値には十分に気をつけたい。

そして、心拍トレーニングで気になることをもうひとつ。体力が上がってくるにつれ、心臓は徐々にスポーツ心臓に変わっていく。これは心臓の4つの部屋のうち、血液を心臓から全身に送り出す左心室が大きくなっていくのがスポーツ心臓の特徴。

この場合、大きくなるのは2通りあって、瞬発系のスポーツと持久系のスポーツではそれぞれ違う。前者は肥大で、後者は拡張。瞬発系では無酸素運動で一気に上昇する血圧に対応するよう心臓の筋肉の厚みが増していくのに対し、有酸素運動が主体の持久系では、運動強度が高くなるにつれ1回の血液量をより多く全身に送り出すようになるために少しづつ心臓容積が拡がっていく。ロード選手はもちろん後者のほうだが、心肥大はあまり好ましいものではなく、健康面でも注意しておいたほうがよいから、ロード選手であっても適正を欠いた(ここ大事)、現在の体力では強度が高すぎると思われる、心臓に大きな負担が掛かるトレーニングは気をつけたほうがよいと思う。心拍計は強度を抑えるためにも利用したい。

ところで、このようにスポーツ心臓になると、心臓容積が大きくなるにつれ除々に心拍数も下がってくるが、献血などではあまりに心拍数が低いと徐脈として献血お断りのケースになることもあるようだ(店長もスポーツ心臓を知らない看護師さんに一度言われたことがある)。徐脈は一定の数値が定められているようだから、献血をされたい方は事前に確認しておいたほうがよいかもしれない。

心拍トレーニングについて、もっと詳しく知りたいという方は、こちらのトレーニング講座で解説していますからご覧ください。

心拍トレーニングを実践したい方は、こちらの「心拍測定プログラム」がお役に立ちます。

関連コンテンツ