自転車修理
買取りのロードバイクに生じていた2台のトラブルについて
昨年買取りしたロードバイクの中で、短期間の買取り中に、立て続けにトラブルを抱えていたバイクに出会いました。その後すべて解決してすでに販売されていますが、そのトラブルとはどのようなものだったのか、少しご紹介したいと思います。
中には、バイクを購入後、パーツを交換する時に間違って装着してトラブルになっていた事例もあるため、ご自分で作業される方は参考にして頂ければ幸いです。
デュアルコントロールレバーのブラケットが破損していたバイク
気付いた時に一番ショックだったのはこちらのバイク。リアのシフトに問題を抱えていたので、その作業を終えてバーテープを巻いていた時のことです。テープは剥がされていたので右側のバーを巻き終えて、次に左のバーに移り、隠しテープをあてようとブラケットのカバーを捲った瞬間、我が目を疑った。割れている。
ここが割れているのは初めての経験。買取りはもちろん修理の時も見たことがない。バーテープは、落車でどこかが裂けたか破れて剥がしたのだろう。査定の際にレバーに落車痕があったから確認したら、やはり落車されていた。
ブラケットの破損は固定ボルトの締め過ぎも関係していたのかもしれない。以前、メーカーから、ボルトを締め過ぎると亀裂が入るケースもあると聞いたことがある。それは単なる締め過ぎだけではなく、過剰なトルクに加え、さらに落車の衝撃等によって部材として強度の限界点を超えてしまい割れてしまったのではないかと考えられる。
それにしても、これまでも落車痕のあるレバーを数多く見ているけど割れているのは初めて。割れがあってもレバー自体はまったく動かなかったので、査定の時は破損には全然気が付かなかった。そこはブラケットカバーで隠れていたし。
今後はレバーに落車痕がある場合、査定の際にはカバーを捲ってブラケットの状態を確認することにしよう。確認項目がまた一つ増えることになるけど、特に装着位置がずれている時は内部で損傷が大きい可能性もあるし、もしテープが剥がされていたらその理由も聞いておこう。
その後、このレバーは前後セットで別の11速レバーに交換しています。リアは変速不良を直したあとだったから二度手間にはなってしまったけれども、フロントも新しいケーブルに交換できたので、外観同様、シフトも新車に近いコンディションで準備できるようになったのはよかったです。
変速不良を起こしていた原因
こちらのバイクは他にもトラブルが生じていて、最初に気が付いたのはリアの変速不良。買取り後、これはインデックス調整ですぐに直るかと思ったものの、調整では直らない。次にチェーンを交換してみる。それでも変わらず、まさかと思い、エンドハンガーの歪みをチェックするもこちらは正常範囲でこれは心配なし。
では、リアディレイラーが関係しているかと別のR7000に交換して試すもやっぱり直らない。最終的にインナーケーブルを交換してやっと解決した。ケーブルの動きが影響していたようだ。
これまでも変速不良となっていた原因は様々あったので、一番時間が掛かりそうなインターナルのケーブル交換は後回しにして一つ一つチェックしていたけど、インナーケーブルを抜いてみると、ユニットに挿入されていた箇所あたりがクルっと丸くなっていた。
長期間ローギアにでも入れっぱなしにしていたのだろうか。インナーを抜いた時に、こういう形状になっているのはほとんど見掛けない。ただ、この箇所でケーブルの動きが悪くなって変速に支障が出ていたのかどうか確定はできないけれども、もしそうだとしても、同じようなことが起こらないように対策として、交換したケーブルには専用のPTFEグリスを塗布し、さらに内装されているライナーチューブにはワコーズのメンテルーブを注しておく。これで通常の動作よりも、変速の操作性も格段によくなるだろう。
ケーブル内装フレームでワイヤーを交換する時に気を付けたいこと
シフトやブレーキのワイヤーを交換する時に、ケーブル内装フレームで気を付けたいことを挙げておきたいと思います。
内装フレームでは仕様によって、2mmとか2.5mmのレンチで止める写真のような小さいネジが使われていることが多くあります。
今回はブレーキのアウターワイヤーのカップ挿入箇所でアウターの被膜が裂けていたので、ワイヤーを交換するためこのネジを外しましたが、サビや腐食で固着する場合もあるので、こんな小さいネジでもグリスは必須。
固着すると、この小さいネジ1本のためにワイヤー交換ができなくなってしまいます。内装フレームでこういう蓋が装着されているバイクは十分注意したい。今回も固着防止のためにテフロンのグリスを塗っておきました。外すときに白っぽい腐食跡があったから、このまま使い続けていたらネジが固着していたかもしれない。
メーカーで自転車を組む時は、おそらくは作業性の関係から、汎用ネジで留める箇所にはこのネジに限らずグリスは塗布されていないのではないかと思われます。自転車の場合は固着を防ぐために、どの場所に使うネジでもグリスは欠かせません。
実際、これまでもトップチューブのアウターストッパーや、シフト内装のダウンチューブなどでも固着していたケースがあって、危うくネジの頭をなめてしまいそうになったことがありました。小さいネジは固着で無理なトルクを掛けると六角穴の角がなめたりするので、固いと思ったら潤滑剤を注すとか、最初からネジすべり止め液を使ったほうがよいですね。
ワイヤー交換は2年に一回の交換が推奨されますが、2年以内だったら固着はないとは思うけれども、もしも2年以上交換したことがないという場合は、ネジが動くかどうか一度確認しておいたほうがよいかと思います。
そして、今回アウターを交換した原因となった被膜の亀裂は、アウター内の鋼線がそこから錆びて動作不良の要因にもなります。シフトの場合はシフト不良。今回のような手間の掛かる原因探しとならないように、定期的な点検とメンテナンスが大事ですね。
ホイールの異音
このバイクは他にもホイールの異音があって、発生場所はハブだと思うが同じメーカーのホイールがあったので、そのホイールに交換して様子を見てみる。
交換したホイールは、別のバイクから外したまったく同じモデルのホイール。仕様はもちろん、デカールも同じ。しかし、高回転になるとこれも同じく異音が発生した。まさか新車の時から出ている異音ではないだろうけど、どれくらいの距離で発生するかは不明。
元のオーナーから走行距離は約2,000kmと聞いている。でも、チェーンチェッカーで測ったリンクの摩耗具合から5,000kmくらいは走っているかな。それでもこの距離で異音が発生するのは、きっと構造的な問題なのだろう。おそらく原因はシールドベアリング。回転がかなり軽いけど同じ仕様のハブと比べて極端に抵抗が少ない気がする。
再度、別メーカーのホイールに交換して、異音がないことを確認し、このトラブルも無時に解決。メンテナンスフリーのシールドベアリングは扱いが楽ですが異音は嫌ですね。店長はMAVICの上位モデルでも激音が出たことがあるので、それ以来、カップ&コーンのデュラエースを愛用しています。
サイクリングでの使用で年間数千キロくらいの走行ならば、カップ&コーンでもデュラエースクラスなら数年間はメンテナンスが必要ないと思います。シマノのハブは手組みの頃から使ってますがデュラエースは耐久性も優れていてかなりいい感じ。
おっと、もうこんな時間。今日はここでタイムアウト。2台のトラブルについて書き始めた今日の記事ですが、夜も更けて時間も時間なので、2台目は次回に持ち越したいと思います。
2台目のバイクは、店長ブロブで一番閲覧数の多いペダルについてです。といってもこれまで書いてきた固着の内容ではなく、こちらも初めて経験する出来事でした。特に初心者の方が間違いやすいペダルの作業内容について触れていきたいと思います。関心ある方は乞うご期待。