自転車修理
ケーブル内蔵バイクのインナーケーブル交換・作業編
前回の記事から3週間も経ってしまいました。なかなか、ゆっくりとブログに向き合う時間が取れません。シーズン中は自宅で更新することが多いですが、いつも帰宅が遅く、帰ると疲れ果てて夕食が終ったらすぐ寝てしまいます。体力もだいぶ落ちてるかな?
さて、先回の続き、ケーブルの内装式バイクでシフトインナーを交換する場合ですが、先回はワイヤーのトラブルに関係する話で終わってしまったので、今回は実際に行なった交換方法を書いてみます。
チェーンスティの内装ケーブルを切断した時のインナーケーブル挿入方法
今回のようなインナーケーブルのほつれトラブルがなければ、リードのケーブルライナーをインナーに挿して、フレーム内に通し、そのまま古いインナーを抜けばよいだけなので作業は簡単です。
手順は、ケーブルライナーをダウンチューブのケーブル挿入口から出して、新しいインナーをライナーに通してチェーンスティから出てきたら、ライナーを抜いておしまい。
もちろん、ライナーをダウンチューブから入れる逆の手順でもよいのですが、その場合は、まずはじめに挿入口付近でインナーケーブルを切らなければ駄目ですね。そうしないと物理的に入れられないから。でも、不測の事態に備えてケーブルの切断は最後にしておきたいのです。
まあ、今回はその不測の事態が生じていて、チェーンスティからライナーを入れてもBBから出てくる感触がないので、結局、最初からケーブルを全部抜いたんですけど。
で、ケーブルを抜く前に、バチンとインナーを切断するその瞬間、一抹の不安が過ぎりました。ああやっぱり通らない。ケーブル交換はそう簡単には終わらなかったのです。
内装シフトケーブル交換に便利なキット
今回の作業では、パークツールの「インターナルケーブルルーティングキット」というものを利用しました。
いつだったか、ブログでも書いた記憶があるんですが内装のシフトケーブルにかなり手こずったことがあって、そのあとで、このキットがあったら楽だったろうなあと試してみたかったツールです。いよいよ出番がきました。
先ほど通らなかったのは、ライナーを入れるまえにライナーのリードとなるインナーケーブル。カーボンフレームのパイプ内は、エポキシの接着剤が塊りとなっていて、BBやエンドは突っかえることが多いです。簡単に入ればと、駄目もとでやったけど駄目だった。
そこで、ケーブルルーティングキットの出番。強力磁石で専用ケーブル(以下ケーブル)をリードします。ケーブルの断面はかなり細いのに、試しにこんなことをしても下に落ちないほど強力です。
ようやく成功したチェーンスティのケーブル通し
実は、このキットを使っても最初はうまくいかず、エンドから入れてBBから出す方法はまったく駄目で、逆にBBから入れてエンドから出すやり方で何度かやってようやく成功しました。
成功するまでは、磁石がエンドまでケーブルをスムーズに持ってきてくれるのに、段差で引っ掛かってケーブルが離れてしまう。これを繰り返すこと数回、何回試しても先っちょを見せてくれない。
そこで、BBのほうからケーブルを回しながら数回押してみたら、ようやく出てくれた。ああよかったとほっとひと安心。あとは磁石をくっつけて引っ張り出すだけです。
次に、このようにケーブルにライナーを通し、ライナーがBBから出てきたらケーブルを抜いてそのライナーにインナーケーブルを挿入して、インナーケーブルがエンド側から出てきたらライナーを抜いてケーブル通しは完了。(文章にするとややこしいですねw)
最初は気軽に構えて、このツールを使えばそんなに難しくないだろうと、あまり深く考えずにケーブルも必要な長さだけ解いて、あとはそのまま丸めた状態で使っていました。また丸め直すのがめんどくさかったから。しかし、これは大変に作業がしにくいです。
さっきのケーブルを回す時も、最初からまっすぐだったらもっとやりやすかったんですが、自転車の作業はなんでも不精すると駄目ですね。結局はライナーを通し終えたあとも、このようにケーブルはぐちゃぐちゃに。
もしこのツールを使う方がいらっしゃったら、BBで一度パイプの外に出る仕様の場合も、専用ケーブルは全部解いてから使ったほうがよいですね。(こんな使い方するのは、私だけかもしれませんが…)
内装式フレームに使用するケーブルライナーの仕様
ところで、ケーブルライナーは各社から出ていますが、通常、内装のケーブル交換に使うのは外径が2mmくらいのライナーです(これは実測2.4mm)。シフト用の内装にはこの太さでないと使えないと思います。シマノでもケーブルライナーを用意していますが、こちらは外径が3.5mmなので内装シフトには使えません。
シマノのライナーは、店長はブレーキの外装ケーブルに使用していた時期がありました。サビ防止とフレームの傷を防ぐため。自分のバイクにも使ってますが、なんとなく見栄えは悪くなりますね。なので、ここ数年まったく使用せず、今はお蔵入り状態。
シマノライナーが内装のブレーキ用に使えるかどうかは試したことがないのでわかりません。現在の内装フレームは、ほとんどアウターストッパーが装着されていて、リアブレーキ側のストッパーが外せないものはライナーが必須ですが、外せない内装フレームは最近見ないので、ブレーキのケーブル交換にライナーを使う機会はそう多くはないかもしれませんね。
ご自分で内装式フレームのシフトインナーを交換する場合は、フレームの仕様によってはケーブルライナーが必要なので、1本常備されておくとよいかなと思います。外径が2mmくらいだったら、どのメーカーのものでもよいです。手に入りやすいものをご用意ください。
リアディレイラーに使用するアウターワイヤーについて
今回のケーブル交換作業では、アウターはデュラエースのOT-R9000を使用しました。こんなに長さが違いますね。先回も書いたように、アウターが短いと変速不良の原因ともなります。
このOT-R9000はセット品のケーブルで、長さは約23cm。従来モデルのリアディレイラーで使う長さは約30cm。新型11Sに採用されたロープロファイルデザインのシャドー型の場合は、アウターが従来モデルよりも短くなりますが、短すぎると今回と同じ現象が発生するかもしれません。変速不良が出ないよう注意したいものです。
それと、今回作業したSRAMの装着インナーは1.1mmですが、アティックでは通常1.1mmは在庫しておらず、今回のケーブル交換はシマノの1.2mmケーブルを使用して作業しました。ワイヤー類の在庫はすべてシマノ製なのです。
シマノでも昔1.1mmのインナーケーブルを出してましたが、逆に引きが重くなるということで、現在は生産していません。シマノのインナーは1.2mmですがSRAMのダブルタップレバーに使っても問題ないので、今回もステンレスのほうを使っています。(シリコンルブリカントを塗って滑りをよくしたあとに)
ただし、コーティングワイヤーはポリマー樹脂なんかは確実に毛羽立ってくるため、もしSRAMにシマノケーブルを使う場合は、ポリマーのコーティングは避けたほうがよいのではないかと思います。毛羽立つことのないオプティスリックは○。
ちなみに、カンパにも一応シマノのインナーケーブルが使えます。ただ、タイコの径がシマノのほうが少し太いので、使う場合はあくまで自己責任になりますね。もちろんSRAMもですね。
ケーブルにグリスを塗って使用する件について
ケーブルの引きの重さで思い出しました。ついでに書いておきます。アウターケーシングにインナーケーブルを挿入する際に、通常のグリスを塗って入れているという話をたまにお聞きします。でも、用途の違うグリスは徐々に硬化していくのでやめたほうが無難です。
もし、グリスを塗布するならば、シマノから、アウターにも注入されている専用のケーブルグリスが出ていますから、これを使うといいですね。ボールベアリングに使用するグリスを使っている場合は、引きが重くなる原因にもなるから避けたほうが無難。
ケーブルにグリスを塗るのをサビ防止で行っている場合は、これはケーブルを定期的に交換すればよいことなので、雨天走行の多い方など心配な方は、1年に一度定期点検の際に交換しておけばよいのではないかと思います。使用頻度が高い場合はワイヤーが切れる確率も高まります。これまでもワイヤーの断裂に関係する記事をけっこう書いてますが、定期交換は必須だと思います。
先ほどの、インナーケーブルにシリコン含有のルブリカントを塗る件についてもちょっと書いておきます。これはケーブルに表面処理を施していないステンレス限定です。コーティングワイヤーの場合は×。
ステンレスワイヤーなどを定期交換される場合ですが、雨でも走られる方は、交換の際に、さらにシマノのケーブルグリスを使うとアウター内の腐食防止にも効果があるので、雨対策はこれで完璧ですね。
ちなみに、ケーブルグリスは、シマノ製のすべてのインナーケーブルに使用できますが、ただし、ブレーキ用についてはポリマーコーティングの場合はご注意ください。グリスがブレーキ側のアウターを受けるカップに付着しないようにして、もし付着した場合は完全に取り除いてください。
これは、雨の時など、ポリマーを伝ってグリスが固定ボルトのところに流れ落ちるのはよろしくないからですね。ポリマーコーティングと他のケーブルとの固定力の関係から。