自転車修理
ケーブル内装式バイクのシフトインナーを交換する方法
昨日、ようやく4月の最終日曜営業を終えて、今度の日曜日がとても楽しみな店長ですw。来週は今季初乗りの予定。
先週は怒涛の日々が続き、昼食が夕食になることもしばしば。週末も夕方からロードバイクを2台納車しましたが、そのうちの1台はケーブルがフル内装のカーボンバイクでした。内装式の場合でも、自分でワイヤーを交換してみたいという方がいらっしゃるかもしれません。ちょっとした物語があったのでそれも交えて参考までにブログに書いておこうと思います。
このバイクはワイヤー交換が必要で、まだ作業を終えていない状態でお客様がお決めになられたので、ことの事情をご説明して一週間後の一昨日、無事に納車を終えました。
アウターワイヤーの長さがもたらす変速不良の弊害
納車したバイクは、完成車ではめずらしく装着コンポがSRAM、シフトは旧式の10速FORCEです。買取りする時にリアのトップ側で変速不良があって、落車はないと言うからこれはワイヤーの張り調整で簡単に直るだろうと思っていたのが、しかし簡単には直らなかった。
原因はインデックス不良ではなく、インナーの断線からくるほつれ。アウターからインナーを抜き取ってわかったことです。シフターのレバー側では割りと見られる現象ですが、今回はリアディレイラー(以下RD)側のアウター内で起こっていて、ここでインナーが切れてほつれているのは初めての経験です。
4枚目のギアから上はスムーズに変速するのに、解除レバーでトップ側に落とすと3枚目から下では異音が発生していました。いくらインデックス調整しても直らない。アウターが短いのが最初から気にはなっていたけれども、アウターのキャップも、ワイヤーの長さが足りないからRDのアウター受けの位置で変形している状態。異音はおそらくアウターワイヤーが短いために起こっているものと判断。
アウターを交換する場合は当然インナーも換えなければならないので、インナーごと交換するつもりでしたがまさかこの場所で切れているとは思わなかった。
異音が発生していた原因
インナーが切れてほつれてしまったのは、アウターワイヤーが短かったからと断言してほぼ間違いないでしょう。長さが短いためアウターが不自然なアールとなって、フレームエンドの受ける部分でインナーの接触が強くなり使用中に擦り切れてしまったものと思われます。(トップの写真は交換後のアウターが装着されています)
異音の原因は、インナーがアウター内を移動する時に、ロー側へは巻き取りレバーで引っ張られるので、スムーズに変速できて異音もなく、解除レバーでトップ側に戻る時はRDのスプリングの力のみで動くから、インナーがほつれてアウター内で接触しているとそれが抵抗になって本来のインデックス位置におさまらず異音が発生していたのですね。
通常は異音が出る場合はワイヤーの張り調整で簡単に解消できます。でも、このようにケーブル同士の干渉でスムーズに動かない場合は調整不可能。
異音が発生したギアの位置とインナーほつれの関係性を考えてみる
なぜ3枚目から下のギアだけで異音が発生していたのか、それはわかりません。仮説を立ててみます。
エンドが特殊な形状で一部インナーが見えているので説明しやすいですね。レバー操作で巻き取られたインナーは前側(レバー側)に移動します。そこで、ほつれた箇所が、トップギアから3枚目までがまだアウターの中にあって、4枚目から上のギアではアウターから出てインナーが見えている位置に来たのではないかと・・・。なので、そこでは抵抗がないからRDも正常な位置となり異音が発生しなかったのでは・・・。(↑の写真ではインナーは途中でカットしたあとなので左側も短くなっています)
あるいは、 異音が発生しないギアの位置がアウター内にあってもアウターが直線のところでは動きがスムーズで、アールの曲がりが大きくなるにつれて抵抗が増しその位置に来た時のギアの位置で異音が発生していたのかもしれない。
そして、使用するギアをトップギアから3枚目までを多用して、いつも重いギアを踏んでいたのかもしれません。事実、以前、いつも60回転くらいで超重いギアを踏んでいたチーム員が練習会の時にインナーケーブルを切ってしまったことがありました。
ちなみに、ケーブルの寿命は変速の仕方にも関係してきます。通常は変速の時は一瞬踏む力を抜きますが、踏んだままシフトすると駆動系全体に余計な負担が掛かりますので気をつけなければなりません。こういう変速をしている方にたまにお目に掛かります。もちろんケーブルへの負担も大きくなります。
ケーブルを引っこ抜いたあとなので、推理みたいなものですが、すべて憶測の範囲です。アウター内でインナーがほつれてしまった真相は闇の中。
今回はケーブルからくる現象でしたが、異音が出る原因は実に様々。エンドハンガーの曲がり、チェーンの伸び、変速機が古くなってガタツキが出てくるとそれも異音が発生する原因となります。スプロケットの磨耗でも起こりますね。
スプロケットの磨耗から起こる変速トラブル
先日の持ち込み修理の時は、異音だけにとどまらず歯飛びにまで発展してしまいました。変な音がするというので確認したら、チェーンがとうに使用限界を超えている。そこで新しいチェーンに交換し、作業台で異音も消えているのでこれで大丈夫と安心したのも束の間。また来店されて、まともに走れないというから実走で確認したところ、今度は歯飛びが起こっていました。
歯飛びはギアに強い力が掛からないと発生しません。ギアを1枚飛び越えて、力が加わるたびに次のギアへと踏むごとにチェーンが滑っていく現象ですね。
おもに通勤用にいつも4枚目だけで使っていたようです。すでに歯先がなくなっています。剣先のような状態になっていますね。チェーンも伸びたまま乗り続けたからギアがどんどん削れてしまったようす。
非常にめずらしいケースでしたが、写真の新品チェーンに換えたことでチェーンとギアの相性が悪くなり歯飛びに発展したようです。
交換するまでのチェーンは、伸びて生じたガタツキが逆に剣先ギアとの滑りを抑える働きをしていたのでしょう。お客様は、何度説明しても一向に納得せず、換えたチェーンがおかしいだとか、今まではこんなことはなかったの一点張り。このギアは使えないから他のギアで使用してくださいと説明しても納得されない。しょうがないから要望により元の古いチェーンに戻すという苦肉の対応策を取りました。戻したからにはチェーン交換の修理費用はその場で返金。何だか釈然としない作業だった。
何事も経験ですが、クロスバイクでまさかスプロケットが剣先状態になっているなんてこれも初めてのこと。クロスバイクを無変速で使うというのはそうそうないと思いますが、これからは経験を生かして状態をよく見て判断し、作業の前によく説明してから行わなければならないと、今後のために勉強となった修理作業でした。
ケーブル内装式バイクのインナーワイヤー交換について
さて、書いているうちに本題からずいぶん外れてしまいました。本来書こうと思っていた内容は、すみません、今日はここでタイムアウト。
次回に、今回のWilierで行ったケーブル内蔵フレームのインナーワイヤーを交換する方法についてご紹介したいと思います。
現在生産されているカーボンフレームは、ケーブルの取り回しはほぼ内装式といってもよいくらい普及していますよね。そして内装の仕様も、各社各様、さまざまです。
以前は、パイプ内にアウターストッパーが両側とも接着されてそこからリードのビニールチューブが出ている内装仕様も多かったです。そのリードが抜けてしまうと大変なことになってしまうんですが、店長もブレーキケーブルで一度やらかして途方に暮れたことがありました。
その時は秘策を練ってなんとか切り抜けましたが、その後もこういう仕様のバイクとか内装式はいろいろ経験しました。困った時も、考えれば何とかなるものです。秘策もそちらの記事で。
今回は、比較的オーソドックスな交換方法ですが、今後、内装仕様のワイヤー交換をお考えの方に少しでもご参考になるようにと書いてみようと思います。関心ある方はどうぞ今しばらくお待ちください!