バイクメンテナンス
ワイドギアのロードバイクがローギア側でギア落ちしていた原因
ロードバイクに初めて乗られる方は、ほとんどの方がしばらくの間は購入した時のままの状態で乗られていると思いますが、今回は、バイクを購入する時に気を付けておきたい、ケーブル類の装着について書いてみます。
買取りバイクでイレギュラーなケースがあったので、トラブル防止のために、新車を購入してまだそれほど距離を乗られていない方はどうぞ参考になさってください。
他にも、ワイドギアのローギアでギア落ちする変速不良について、こちらはもっと身近な問題としてすでに同じような状況が生じている方、あるいは今後経験なさる方もいらっしゃるかもしれませんので、この変速不良を解決したその作業方法も併せて共有していきます。
シフトケーブルのルーティングを誤って組み立てられていたバイク
ビアンキを査定している時のことです。後ろ側からホイールを確認しているときに、ふと、リアのシフトインナーに目が留まった。ケーブルがチェーンスティの内側に見えている。あれ? その位置はおかしいなと思い、BBシェルの裏側を確認してみたところ、ケーブルがガイドを通っていない状態だった。
インナーがガイドのブリッジをくぐっていないので、装着する際の弛みによって位置がずれ、ガイドの固定ボルトに引っ掛かったようす。そのためインナーが本来の位置からタイヤ側に寄っている状態で装着されている。
ビアンキは、工場でバイクを箱詰め作業する時は、ケーブルは装着しない状態で梱包すると聞いているので、購入先でバイクを組んでいる最中にケーブルを通し忘れたのだろう。
こちらのバイクは走行距離が500kmとまだそれほど乗られていなかったので、とりあえず今のところは支障なく使えている状況だけれども、もしこのまま乗り続けていたらどうなっていたか?
現在の些細な問題から、このままだと、そのうち遭わなくともよいトラブルに発展する可能性もなくはないですね。詳しくはのちほど。
ハンガーシェルにケーブルガイドが付いているバイクで気を付けたいこと
シフトのインナーケーブルを通す方式はフレームの仕様によって多種多様。ダウンチューブのルーティングは大別すると内装式か外装式のどちらかですが、近年のバイクは、エントリーモデルでも、一部の外装式を除いてほぼ内装式。内装式でも廉価モデルの場合は今回のようなケーブルガイドを装着しているケースがほとんどです。そして、ハンガーシェルに装着するケーブルガイドは種類が2つ。
こちらのワイヤー交換した内装フレームのように、カーボンフレームではガイドをハンガーシェルに嵌め込むタイプは溝だけのケーブルガイドもあって、こういうタイプはチェーンスティの中をケーブルが通るので外れる心配はありません。
他方、アルミフレームでは、ボルト止めで装着されているガイドはハンガーシェルから浮いた状態で装着されるため、ケーブルがずれないように溝に一ヶ所だけブリッジが付いています。
左がシマノ純正品で、右は完成車の装着品。シェルの外側に装着するガイドなら、どんなガイドも前用と後ろ用の溝にこのようにブリッジが必ず付いてます。(無いものもあるかも知れないけど外付けでは見たことない)
このブリッジはけっこう大事。なぜでしょう。今回のように、ここを通し忘れると以下のような問題につながります。
ケーブル装着では十分気を付けたいことだけれども、インナーケーブルをこのブリッジに通さずに、ケーブルがもしガイドの溝から外れて固定されてしまうと、その後、二つの変速トラブルが考えられます。
一つは本来のインデックス位置が変わることによる変速不良。例えば、今回みたく固定ボルトに引っ掛かったケーブルが、トップ側の張りが弱い時に振動などで引っ掛かりが解けて緩くなり、ハンガーシェルをルーティングしている位置が変わった場合、当然ケーブル全体の引張力が弱くなることで、リアディレイラー(以下、RD)のインデックスに影響が出ます。RDのガイドプーリーを通るチェーンの位置が、正常なギアの位置から外側にずれてしまうからですね。
この場合は、張りが弱くなった分だけケーブルアジャスターで調節しなければいけません。でも、本来通すべきガイドの位置からこれだけずれていると、緩んだ程度にもよるけれどアジャスターでは難しいかもしれない。結局、ガイドのブリッジにケーブルが通っていない場合は根本的な解決にはなりません。
アジャスターで調整しきれない場合は、本来のガイド位置に通し直してから再調整となりますが、おそらくそのままではインナーを再装着することは難しい。インナーキャップを取る時にかしめている先端がばらけるケースが多いから。その状態では一度アウターから抜いてしまうと再装着はできません。
キャップを取らずにキャップ部分をカットする場合も、RDの固定ボルトの箇所でインナーが潰れているし、長さが短くなる場合もあって、結局はケーブルを交換せざるを得なくなる可能性が高くなるのではないかと思います。
ケーブルが切断された場合に考えられるアクシデント
今回のようなルーティングでは、もう一つ心配なのが、転倒にも繋がりかねないケーブルの切断。こちらはもっと深刻です。先ほどの逆パターンを想定してみましょう。今回はリア側でしたが、これがフロントのほうで起こっていた場合にどういうことが考えられるでしょうか。
写真は先ほどの見出しの拡大画像ですが、もしこのまま使い続けて、ここのワッシャー部分で引っ掛かりが解けない状態が続いた場合、ここで断線が生じてしまい、徐々に撚っている1本1本が切れていきます。最後に残った数本が一気に切断されると、どういうことが起きるかというと・・・。
例えばフロントをアウターギアで乗車していた場合、強制的にインナーギアにシフトされます。坂道でダンシング中だったら怖いですね。いきなり踏んでる力が軽くなりバランスを崩して転倒する危険性も。
そして、ロングライドの途中でアウターギアが使えなくなったら、これもまた悲劇。平坦路を、春先の強風を進むがごとくに延々とインナーギアを踏み続けなければなりません。絶対に避けたいですね。
やっぱりケーブルの装着位置は正しい場所に付いていたほうがよいようです。バイクを購入してからまだ一回も点検したことがないという方は、一度バイクの裏側を確認してみてください。
ちなみに、カーボンフレームのBB裏側でもこういうビックリすることが行われている事例がありました。特にケーブル外装式のカーボンバイクで、なんだか変速の調子がおかしいという場合は要チェック!
ハンドル側のワイヤー取り回しが間違っていたバイク
今回のバイクは、ハンドル側のルーティングも、ブレーキとシフトワイヤーともに間違っている。購入先が全国に出店しているところですが不具合な箇所をけっこう見掛けます。修正する場合はインナーを抜かなければならないので、前述のように今後トラブルが懸念されるシフトのほうだけ、インナーを交換するついでに直すことにします。
ブレーキのほうは、リアのアウターが通常はフロントアウターの外側を通るルーティングが、このバイクは内側を通っており、さらに長さも長いのでフロントのアジャスターに干渉している。
ブレーキのほうも修正したいけど、これを直すには、トップチューブに内装されているワイヤーを一旦抜かなければならないが、抜く時に入れるライナーのチューブがフルアウターなので使えない。なので、今回は、アウターストッパーが付いてるフレームで通常行うライナーでリードする方法では直せません。他にも二つの方法があるけれども、多少リスクがある作業なので、気にはなるけどこの状態がすぐにトラブルには直結しないと思うから今回は見送り。
この状態は接触しているアジャスターでアウターが擦れないとも限らないが、そうなるのはかなり時間が掛かると思うので、ワイヤーは定期交換しなければならないからその時まで大丈夫でしょう。
参考までに、もしこれを修正する場合は二つの方法があります。同じ状況でもし試されたい方は以下を参考にしてください。
完成車でリアブレーキのワイヤー取り回しを修正する二つの方法
修正の仕方、一つめはアウターの後ろ側で行う方法。どういう作業かというと、まず、装着インナーを抜いてから新品インナーをキャリパー側からアウターに挿入し、これをリードにしてトップチューブからアウターを抜き、取り回し位置を直したあとにアウターをまたリードの新品インナーに戻し、次に新品インナーを抜いてから、キャリパー側でアウターの先端を適正長さにカットしたあとに、今度はレバー側から新品インナーを挿入するという方法です。最初に抜いたインナーは交換になります。作業に不慣れな方にはちょっとややこしいですね。
なぜキャリパー側からインナーを入れるかというと、フルアウターのトップチューブからアウターを一旦抜いてしまったら、そのアウターを出口から出すのに苦労する場合があるから。出口がキャップ式でない場合はインナー挿入は必須です。リードにするインナーは、しっかりトップチューブの外側まで出る長さまで入れてからアウターを抜くようにします。そうしないとまた別のトラブルが・・・。
レバーから入れるインナーが新品だと、おそらくバーテープを剥がさなくてもレバーブラケットに刺さっているアウターにそのまま挿入できると思います。先端をカットしたインナーだと再挿入できない可能性もありますが、新品インナーは先っちょを焼いて束ねているので大丈夫なはず。
二つめは、アウターの前側で行う方法。ハンドルに巻いているバーテープをステム側からレバーブラケットまでを剥がしてから、アウターをハンドルに留めているだろうと思われるテープを全部外したあとに、ブラケットに刺さっているアウターの先端をブラケットから抜いて、装着インナーをアウターから全部抜いたあと、ブラケットからはインナーは全部抜かずに外れない程度の長さでその位置に留めておき、アウターの取り回し位置を直したあとに、再びインナーをアウターに挿入してからアウターをブラケットに戻し、キャリパー側でアウターの先端を適正長さにカットして再装着する方法です。こちらもちょっとややこしい。
この方法は、バーテープを剥がす時に、EVA製のコルクテープは粘着テープで引っ付いているところが途中で切れてしまうことが多くあって、その場合は再利用できないためバーテープの交換が必要です。
こんなトラブルも予想されるため、今回は敢えてリスクのある作業は行わずにブレーキのほうは見送った次第です。
ワイドギアのローギアで2速にギア落ちしていた変速不良
こちらのバイクは、他にも使用上よろしくない現象がみられていて、リア側でローギアのみ変速不良が起こっていました。インナーローの状態にすると、2速に1段落ちてしまう。フロントディレイラー(以下、FD)にも問題が生じていた。
リアのシフトは、走行距離約500kmということで落車もないと聞いていたから大丈夫だと思っていたのに、調整を何度繰り返しても直らない。
最初はFDの調整位置も間違っていて、ローギアにシフトしようとした時にFDのスキッドプレートに思いっきりチェーンが当たってローギアに入らなかったから調整し直したら、ローギアに上がるようにはなったけどギアが落ちてしまう。
もしや、RD側のアウターが短くて、それでケーブルの張りが強くなりすぎてギア落ちにつながっているのかも、と思い、RDはシャドータイプなのに、アウターは10s以下で使われる鋼線タイプが装着されていたから、シャドータイプ専用のアウターに交換して長さを調節したものの、残念、それでも直らない。
これまでの作業で直らなければ、以前もロー側ギアで起こっていたシフト不良の時と同じように、エンドハンガーが歪んでいる可能性が高くハンガーをチェックしてみることにする。
ノギスで上下左右の4個所をチェックすると、やっぱり、エンドハンガーに歪みが出ていた。修正した結果、ローギアのシフトトラブルは解消した。後方から見ると、RDのケージは傾き具合が変わっていないように見えるけど、横の歪みは片側5mmあったのが4mm分修正され、フレームセンターに対し左右で±5mmから±1mmとなり、ほぼベストな状況に補正された。
今回の事象は、走行距離は500km未満とまだそれほど乗っていないのにこういう現象が生じたということは、ハンガーの素材が関係しているのかもしれない。修正作業でハンガーが柔らかいように感じた。シフトの不良は以前FUJIに生じていた時と同じく横の歪みが原因だったが、32Tのワイドギアを多用していると負荷が大きく横が歪みやすいのかもしれない。あくまで推測。
あるいは、横は左右で±5mm程度だったら、もっとローギアの歯数が小さければ影響が出ないのかもしれないが、作業中はそんな考えも浮かばず他のギアでは検証していないので詳細は不明。
FUJIの場合は、横は左右で±15mmもあったからローから3枚目くらいまでシフト不良が発生していたけれども、今回はローギアでだけだったので、もしかしたら、ローギアがもっと小さければ発生していなかったのかもしれないなと思いました。また同じようなケースがあったら小さいギアで試してみよう。
縦のほうは、上下で±4mmの歪みだった。縦は先回のFUJIと同じように、弾力が強くて数値は変わらず。ただ、縦の歪みはこのくらいの数値であれば、シフト不良が起こっても通常はインデックス調整で直ると思います。