バイクメンテナンス
自転車フレームに貼った頑固なシールを簡単に剥がせる秘策とは
ロックタイトの「強力粘着剤はがし」、ご存じの方も多いと思います。このリムーバー、初めて使う方はきっとビックリします。「泡がとどまり強力に除去」という表示のとおり、シュッと一吹きすると剥がし液が泡状になって、ピタッとくっ付いたあとまったく垂れない。ほんとビックリ。泡としてはけっこう固く噴霧されるようです。
強力な粘着剤はがしはロードバイクにも利用できるか
この商品、注意書きを見てみると、自転車に使うにはちょっと怖い表示があって「塗装・プラスチック・ゴムを溶かします。ご注意ください」とあります。
ロックタイトのサービスセンターに聞いてみました。本来は、窓ガラスなどに貼ったガムテープなど、古くなって固くこびり付いたテープ跡の粘着剤落としとして使うのが最適なようです。他社製品でも、リムーバーの使用目的が違うのでしょうが「塗料の塗膜が簡単にはがれます」と記載されている商品もあります。一抹の不安を感じながらロックタイトのほうをさっそく試してみました。
塗装を溶かすという表示から、クリアコーティングされているとはいえフレームにいきなり使うのは怖いし、噴霧してからどれくらいの時間置いたらよいかもわからなかったので、まずシートポストに貼られていたシールで試してみました。噴霧後の放置時間は5分。
金属の塗装は大丈夫。噴霧してから5分間経ってもシートポストの被膜は状態変わらず。このように何の影響も受けていないのでパーツには使っても問題ないかな。(あくまで今回使ったシートポストでの結果です)
次に、けっこう気になるブレーキ本体のキズ防止テープにトライ。キャリパーブレーキは、製品単体の時にアームが接触する箇所にキズが付かないようテープが貼っています。組む時に剥がせばよいのですが貼りっぱなしのバイクも多く見受けられます。このテープはバイクに装着したあとは剥がしにくいので装着前に剥がすのがポイント。
で、一定年数を経過したバイクはテープを剥がすと必ず跡が残ります。シマノの場合はパーツクリーナーで除去できますが、テクトロなど白く糊が固化した塊はパーツクリーナーでも取れません。この塊にも「強力粘着剤はがし」は効くだろうか。
この固化した粘着糊はガムテープが古くなってこびり付いたテープ跡とおんなじ感じ。強力に貼り付いています。さすがの「強力粘着剤はがし」も、手で擦っただけではまったく取れません。
そこで、これまで使わなかった付属のプラスチック製へらで擦ってみる。固いものでこそげ落とすとよいようです。きれいに剥がれました。
年式の古いバイクで手を焼いていたブレーキの頑固なテープ跡も、これでだいぶ作業が短縮されそうです。
いよいよフレームで「強力粘着剤はがし」のリムーバーを試みる
いよいよ、チェーンスティの保護テープが汚れているバイクで、フレームのほうで何か影響が出るか試してみます。影響出てもショックが少ないように、最初の1台は、安価に設定する予定のバイクで行いました。
チェーンスティに貼られているテープは、フロントギアがインナーでリアがトップ側の状態で使っていると、チェーンが弾んでバンバン当たるとテープにキズが付いたりします。キズが多いと付着した油汚れが落ちず見栄えも悪いですね。
なので、テープを貼り替えたくなる場合もあるかと思います。剥がす時に、数年くらいだとそのままきれいに剥がれますが、紫外線で劣化したテープは途中で切れることも多いです。案の定、今回も切れた。残ってしまったテープにスプレーして試してみます。
結果は、残念。噴霧後、電話で3分くらい目を離したところ、テープは簡単にペロッと剥がれたがクリアコーティングを少し痛めたようで表面が微かに溶けた。
チェーンスティをよく観察しないとわからない状態だったので、手で触って確認したとき少しデコボコしているから最初はまだテープの粘着剤が残っているのかと思いました。でも違う。まじまじと見ると、あきらかにクリアコーティングが溶けた箇所がところどころ剥がれている。
このことから、フレームに使う場合は、噴霧後は時間を置かずに拭き取ったほうがよいようです。塗装やプラスチックが溶けるという「強力粘着剤はがし」の表示、誇大表示ではなかった。
あとで作業するシール剥がしでも、吹き付けてすぐに粘着糊が溶けることは確認済み。剥がす場所にシュッと噴霧したら速やかに拭き取りたい。自転車のフレームに使う場合は、この作業に集中してやれる時間以外は避けたほうが無難です。今回のように数分でクリアコーティングが溶ける危険性が高いと思われます。(価格帯と使用年数による劣化具合によっても変わると思いますが)
粘着力が頑強なシール「TSマーク」や一部のショップシールに使用してみる
中古買取りをしていると必ず必要になってくるのがバイクに貼っているシール剥がし。もちろんバイクに最初から貼っているメーカーのデカールとかではなく、ショップのシールとかTSマークなど後から貼り付けたシール。
ショップのシールはまだしも、1年の補償期間を過ぎたTSマークは、次のオーナーの方にとっては逆に迷惑なシール。貼っている意味がないので確実に剥がしておかなければなりません。
ちなみに、TSマークといっているのは「TSマーク付帯保険」の保険に加入していることを証明するシールのことで、保険会社は三井住友海上火災。自転車屋だけが扱う保険で点検を受けることが前提です。少し説明しておきましょう。
この保険は自転車の点検を受けたあとに加入しますが、事故の際の補償内容がかなり厳しく、お客様との会話のニュアンスから、加入者は内容を把握せずに入っている方が多いのではないかと思われます。事故で被害を被っても重症となるケース以外は適用されません。ここを知らないようです。
自転車屋でも、そのことを把握しているショップさんはしっかり説明されているようですが、内容を聞いて加入しない方もいらっしゃると聞きます。掛け金が安価なので補償のハードルが高いのでしょう。
TSマークの固着力を見極めるポイント
さて、チェーンスティで試した結果を踏まえて、いよいよ、難関のTSマークにトライ。TSマークは経過年数によって固着力が全然違う。10年以上経つと通常の剥がし液はまったく歯が立たない。シールがすぐに破れてそのまま剥がすことができないのです。フレームに貼られている中でおそらくもっとも粘着力が強いシールです。そして、一定の年数が経過すると剥がす難度がもっとも高いシール。薄いアルミ系のシールは経年劣化で破れやすいから。
TSマークは数年以内だとシール自体はそれほど劣化していないので割と簡単に剥がれるケースも多いです。3年くらいだとまだシール自体はそのまま剥がせるかな。
でも、フレームに貼り付いた糊はシールと一緒に取れる場合と、糊だけフレームにべったりと残る場合があって、今回は2020年モデルだったけど手間の掛かる後者のほうでした。
ショップのシールでも強力に貼り付いて剥がれないシールもあるけれども、一旦剥がれたあとは残った糊は通常の剥がし液でもすぐに除去できます。ところがTSマークは違う。フレームにくっ付いて残った粘着糊はねちゃねちゃした状態になってこれがなかなか取れない。なぜだろう?
ほんとに凄いリムーバー、ロックタイト「強力粘着剤はがし」
このねちゃねちゃ糊を、ロックタイトの「強力粘着剤はがし」を使ったらどうなるか、さっそく試したところ、これは凄い。フレームにべったりとしぶとく残っていたねちゃねちゃ糊も簡単に除去できました。ロックタイトを用意する前に市販の剥がし液で格闘していたのが嘘のよう。その時は、残った糊をただ柔らかくしているだけで、除去するのに、摘まんでは取って摘まんではまた取っての繰り返しで、TSマークで糊が残った時は時間が掛かって本当に大変でした。このはがし液で一挙解決。
これはほんとに凄いリムーバーだ。ただし、先ほどのチェーンスティのように、塗布したあとに時間を置くのは禁物。バイクの製造年数に関わらずフレームのクリアーが溶ける可能性もないとは言えず、吹き付けたら時間を置かずにすぐに拭きとるようにしたいものです。サービスセンターの方も自転車に使う場合は危惧されていたので。
それと、吹き付ける時に衣服に付着しないように気を付けたほうがよいと思います。たぶん生地が痛みます。臭いも強烈なので、狭い場所での作業は避けたほうが無難。
ちなみに、TSマークを貼付後10年以上経過したバイクですが、この粘着剤はがしを仕入れてからはまだお目にかかっていないので、シールの密着性が強くて液剤が浸透していかない場合は難しいかもしれません。やってみないとわからないけど、無理だったらこれまで同様あとはカッターナイフで剥がすしかないです。
この方法は、シールとクリアー塗装の間に刃を入れて、そのままシールだけを削れるかどうかがポイント。ちょっとでも角度を間違うと塗装が削れるし、凄く神経使います。シール剥がしの最高難度かもしれない。でもこの粘着剤はがしで剥がせないなら、これしか方法はないですね。
防犯登録のシール剥がし
防犯登録のシールもやっかいなケースが多々あります。都道府県によって新品の時から粘着力も様々で、こちらはTSマークほどではないにしろ、やっぱり相当の年数が経過するとガッツリとくっ付いて剥がれません。(北海道は割と楽なほうですが)
くっ付いたシールが相当劣化している場合、端を捲ろうとするとそこだけ破れて、全部剥がそうとすると大変な労力が要ります。爪も痛い。
頑丈シールで一度スクレーパーを使ったことがありますが、その時は塗装を傷つけてしまいました。看板屋さんがウインドーのカッティングシートをガリガリ剥がしているからよいのかなと思ったけど、その時は失敗。スチールだったのでカーボン製だったらよかったかも。中古バイクを手に入れて防犯シールが気になる方はドライヤーで温めてからトライすると良いかもしれませんね。
さて、こちらもTSマークと同様の剥がし方です。今回「強力粘着剤はがし」を最初に試したバイクは2017年モデル。防犯登録シールは目立たないように、ロードバイクでは一般的なダウンチューブの裏側に貼られていました。
北海道のシールは5年くらいだと比較的糊は残らず簡単に剥がれるのに、今回は糊はべたッとくっ付いたまま。保管状態にもよるのでしょうか。塗装はマット系で、この塗装の場合はどうだろうと、これも一抹の不安を感じつつ作業に掛かる。
クリアーのグロス塗装は問題ないことを確認しているけど、初めてのマット塗装では噴霧したあとさらに素早く撮影後すぐに拭き取りました。
よかった。マット塗装でも問題なし。ただ、車体番号を記載したシールのバーコードが一部消えてしまったので、はがし液を噴霧する時は、印刷物にはわずかな量でも掛からないよう注意したほうがよいようです。
このことから、「強力粘着剤はがし」を使う時には、フレームやホイールに貼られている表面加工のされていないデカールには液剤が付かないよう重々気を付けたいものです。バイク製造後の経過年数にもよるでしょうが、バイクのデカールから文字が消えてしまったらきっと衝撃が大きいでしょうからね。