バイクメンテナンス
北海道の自転車シーズンスタート、ロードバイクの準備は万全ですか?
「北海道にも春到来」という書き出しで3月に記事を1本予定していた当ブログ、到来どころかすでに春真っ盛りで札幌も桜が咲くほど暖かい季節となりました。先日は23度なんて日もありましたね。
3月もお預かりのメンテバイクなど例年より超忙しく、時には分刻みで働いている感覚。夜間作業も多くて精神的にも肉体的にもゆっくりブログに向き合う時間が取れなかったです。3月中旬から続いていた丸々1ヶ月の無休営業を終えて今シーズン初めての日曜休業日、ようやく気持ちの上でもゆとりが生まれ今日は自宅でまったりした時間を過ごしました。
自転車シーズンスタートということで、季節的にもスポーツバイクの洗車が多い時期ですが、札幌では珍しいのか年々ご依頼が増えている感じがしますね。先週は4日間8台洗車しました。そのうちクロスバイクが3台、通勤で使い始める前にきれいな状態で用意したいのだと思います。
洗車業務は平日のみで、営業前の早朝に行っているため一日2台まで。洗車時間は汚れ具合にもよるけど2台だと1時間から1時間半くらいかな。さすがに早朝洗車が連日続くと疲労も濃くなり店内作業に響くので、先週は1日休んで今週は火曜日から再開です。明日は開店早々納車があるから先週末預かった2台は火曜日に予定しています。
洗車は予約制ですが現在少しお時間を頂くかもしれません。ご希望される方はこちらの修理メンテナンスページからお願いいたします。
洗車とオーバーホール
洗車の時は点検整備やオーバーホールも同時にご依頼される方が多いんですが、オーバーホールは使用年数や頻度、走行距離をお聞きして必要ならお受けしています。今回も1件オーバーホールすることになって、ヘッドセットをグリスアップしようとしたところ、ここでトラブル発生。
厚いスペーサーの中でアルミが腐食し固まっているようで、フロントフォークを外すことができません。圧入しているパーツが少しくらい固いだけならコラムを叩けば抜くことができます。しかしこちらのバイクは通常よりも強く叩いても抜ける気配がなく、ママチャリでクイル式ステムが固着している時に使うでっかい鉄ハンマーを使っても駄目でした。
クラウン側に数ミリ隙間ができたものの、それ以上続けるとベアリングに影響が出てハンドリングに支障が生じても困るので、ヘッドのオーバーホールは断念することに。
シートポストやステムが固着して外せないことは何度かあったけど、スレッドレスのヘッドセットでは初めて。ヘッドのオーバーホールでカップの中やクラウンレースが錆びていることはよくあります。雨天走行が多いと思われる場合は、パーツが錆びて外せなくなる前に、特に通勤などで使用しているバイクは早め早めのメンテナンスがお薦めです。
変速不良を起こしていた原因
8台の洗車バイクでもう1件不具合があって、そちらはフロントの変速でインナーからアウターへ変速しないというシフト不良のご依頼でした。この不具合の原因、詳しくはのちほど。
バイクを見てまず気付いたのが、リアディレイラー(以下RD)の調整不良です。2つありました。1つはインナーの時にトップ側でテンションが取り切れていない調整不良。写真のとおりチェーンがたるたる状態になってますね。(上の写真)
これはエンドアジャストボルトの調整でピンと張って簡単に解決。本来は、最初にローギアの位置でチェーンづまりしないよう、ガイドプーリーとギア間を調整しておくべきものですが、それがされていなかったようです。トップギアでもチェーンづまりがなく、フロントインナーでたるみがなければOKです。
もう1つはシフトの調整不良。アジャスターでシフトの調整をする時に気を付けたいのが、RDのアウターアジャストボルトを出し過ぎること。
ケーブルを張るためにアジャスターのカップからケーブル受けのボルト(アウターアジャストボルト)を出し過ぎると、ディレイラーにねじ込んでいるこのボルトが外れることがあって、外れてしまうとボルトの先っちょでディレイラー本体のネジ山をつぶしてしまいます。
今回は大丈夫でしたがけっこう多く見受けられます。Rシリーズになってアジャスターでの調整幅が広くなりましたが、それでもこれは出し過ぎ。
ハンドル側かダウンチューブにアジャスターが併用されているならそちらも使い、それでもこれくらいアジャストボルトを出さないと調整できなければ、ケーブル固定ボルトを一旦緩めてしっかり引っ張ってから固定し直したほうがよいです。もちろんアジャスターは元の位置に戻した状態で。
ネジ山がつぶれている場合の対応策
もしもですが、ディレイラー本体のネジ山がつぶれている場合は、アジャスターが機能せずシフト不良を直すことができないので、修正タップでネジ山を立て直すしか方法がありません。あとはRDごと交換。RD以外のアジャスターを使う場合もアウターケーブルがしっかり固定されていることが前提なので、このままでは調整できない。
ネジ山のタッピングは、ディレイラーはアルミなので最初の引っ掛かりさえ掴めれば修正はできます。これまで数十回作業して一度も失敗はしていないけれども、やってみなければ修正できるかどうかはわからないのでアジャスターを調整する際は十分お気をつけください。(といってもご自身で作業していない場合は仕方がないですが…)
もしこの記事をご覧になられて修正を試される場合は、一点だけ注意が必要です。ショップさん向けになりますが、ネジを立て直す時はタップを奥まで入れる必要はありません。入れすぎると先端に圧入されているリングが外れます。外れたら押し込めば入ります。
ただ、このリングは、インナーケーブルでアルミ製の本体が擦れないようにロックタイトで圧入しているので、一度外れたものを再圧入して使う場合は自己責任での使用となります。一旦緩んでいるので走行中にまた外れてしまわないとも限らないから。
ネジ山がつぶれているのは入口付近だけですから修正の際はあまり深くまで浚わなくともよいと思います。
なお、ネジ山の修正に失敗するとそのRDは一切使用できなくなるため、一般ユーザーの方は自分ではチャレンジせずショップに任せたほうが賢明です。
フロントディレイラーの変速不良につながる一因
さて、いよいよ本題。お客様が指摘していたフロントディレイラー(以下FD)が使えない件について。
こちらのバイクはRDもインデックスの調整不良で変速に不具合が出ていましたがフロントはもっと深刻。確かにインナーからアウターにまったく変速できない。
RシリーズのFDはそれまでの11速と初期調整がまったく違います。こちらのバイクは最初から調整が間違っていました。お客様は購入してからパーツは弄っていないということで、使用している途中から変速不良になった原因を書いていきたいと思います。
写真を交えて説明していきます。店長が作業し始めた中途からの説明です。用語はご自身で整備されない方には難しいと思われますがシマノのサイトに載っているマニュアルに記載の用語を使用します。
リンクのシマノページはディーラー向けですがPDFで公開されているので誰でも見ることができます。写真で店長が説明していく内容は、目次の「調整」項目(16ページ)で確認できますから関心ある方はご覧頂ければと思います。
基本、状態を写真で見ていただく箇条書きのような説明。ではまいりましょう。
まず、このバイクはケーブル調整ボルトがいっぱいまで締め込まれていて、最初からケーブルの張り調整がなされていない状態だったと思われる。(写真撮り忘れた)
そこで、初期状態から始めるためケーブル調整ボルトを緩めてもアジャストバレル突起部がインプットリンクに当たらない。目いっぱい緩めても駄目。どうして?
アジャストバレル突起部を一旦戻してもう一回試したところ、さっきよりも手前で止まるので、ケーブル固定ボルトを外して受け側(正式名称はマニュアルには記載がないが「ケーブルフィキシングスクリューユニット」、長いので以下「固定ボルト受け側」)の状態を確認してみると、インプットリンクの端に引っ掛かっている。
調整の時に固定ボルト受け側を動かすとスライドが重くてジャリジャリしていたのも気にはなっていたが、これは砂が原因で固定ボルト受け側が浮いてしまい、インプットリンクの端に引っ掛かりインプットリンクの中まで入っていかなかったようだ。
こうなると調整は一切できないので、固定ボルトの受け側を外してクリーニングする。
パーツクリーナーで拭いてから、ウエスで取り切れない細かい箇所の汚れは綿棒で取り除く。
そして、油汚れが落ちたことを確認したあとに、エアーガンでエアーを吹き掛けておけば完璧。もし細かい砂粒が残っていてもエアーで全部吹き飛ばせるから。
クリーニング後は動きもスムーズ。FDを初期状態から再調整する際に、今回のような状態になると潤滑剤を注しても解決しません。(確認済み)
固定ボルト受け側の下に砂が入ると動きが悪く調整もしづらいので、こういう場合は面倒でも外してクリーニングがベストです。
以上、今回の変速不良の原因は、初期状態での調整がしっかりなされていないことが一つ、調整不足でも最初は変速していたのが途中からまったく機能しなくなったのはFD内に入り込んだ砂が原因の二つの要素が重なっていました。
最初はプレートを可動させてチェーンがギアに引っ掛かる動作の最中ぎりぎりのタイミングで変速できていたのが、途中からそのぎりぎりのタイミングから外れてしまい、FDの可動位置が変わったため生じてしまった現象だと思われます。通勤など雨天走行の多い方はご注意ください。定期的な洗車がベストな予防策です。
STIレバーの空打ち現象
ところで、先回のブログで、書いてる時間がなくなり持ち越しになっていたトラブルの件についてちょっと書いておきます。
購入からある程度の年数が経過し、その間使用していなかったバイクに発生している現象で、STIレバーの変速操作が機能しないというケースがこれまで何度かありました。
中古バイクを買取りしていて、経験上、10年以上経っているバイクに多く見られる現象です。発生する年数は保管状態にもよるでしょうから一概には断定できませんが、この間一度も変速操作をしていないバイクは、STIレバーがスカスカ状態になって、ユニット内でケーブルを巻き取るためのラチェットが機能しなくなるようです。ラチェットの爪が固着して戻らなくなるんですね。
こうなると、もちろん一切変速することができません。解決策は乗らなくてもたまにSTIレバーの変速操作をしてあげること。
なぜかフロントに多く発生しているように思います。たぶん、乗っていた時はリア側が多く使われているので、固着の原因となっている爪の摩耗を防ぐために塗布されているグリスの量が少なくなり、リアのほうはグリスが固まらず起こりにくいのではないしょうか。
年数回でも乗っているケースでは10年経っても同様の症状は出ないようです。逆に10年以下と聞いているバイクで発生していたこともありました。湿度が高いとか保管状態によるのかな?
先回のトラブルバイクはすでに直して販売済ですが、このような症状を起こしていたバイクについては、ショッピングページに掲載する時は店舗での販売に限定し、上記の使用方法を説明してご納得されてから販売することにしています。ショッピングページでは「店頭販売商品」と表記されている場合はその理由を明記しています。もし、特に掲載がなくて購入を検討されるバイクがありましたらお問い合わせください。