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心拍数の推移を解析

自転車トレーニング講座 心拍数の推移を解析

心拍数の推移を解析

心拍トレーニングを行う上で基本となる数値を求めることが心拍測定の目的ですが、その測定結果をグラフ化して解析してみたいと思います。縦軸に心拍数、横軸に時間の目盛をとって折線グラフにしてください。

1. リカバリー心拍領域

心拍数が上昇していく時に、その値が途中で上下する場合があります。これは運動によって生じた血液中の乳酸を酸素が分解しているからです。

体内では、エネルギー産生の時に副産物である乳酸が一定の割合で発生しています。その一定のペースを越えた分を除去するために、赤血球中のヘモグロビンに含まれる酸素の供給量がそれまでよりも多くなります。そのため、相対的に酸素が含まれる血液の拍出回数も増加します。過剰な乳酸が除去されると心拍数はいったん下がります。その後も、一定ペースでエネルギー産生と乳酸除去が繰り返されていきます。

測定結果を拝見していますと、体力差によって、すでにこの領域の心拍数でも大きな違いが確認できますが、運動能力がまだ未発達の方は数値も高く、酸素の供給能力も弱いことから比較的直線的に上昇する傾向にあるようです。ダイエット目的でトレーニングする場合の心拍数は、後述する「LSD心拍領域」の下限値以下を目標としてください。この領域は脂肪燃焼効果も高いです。

リカバリー心拍領域

2. LSD心拍領域

測定開始からまもなくして上昇率のカーブの変化が大きいところが、LSDトレーニングをする時の目標範囲の下限値です。

血液中の酸素を供給する時に、1拍あたりの血液の拍出量(※注)を徐々に増やして対応していたのが、ある強度以上になると、その必要とされる酸素の供給量に対応しきれなくなり回数を増やすことで補い始めようとします。ある強度というところが、すなわちLSDトレーニングを目的とする時の境界線となります。回復トレーニングではこの心拍数を超えないように注意しましょう。

【ご参考】(※注)

血液の拍出量は通常70~80mlくらいですが個人差があります。例えば同じような体力レベルにあるアスリートであっても、同じ運動強度での心拍数を比較した時に、数値に相当違いが出てくるケースもあります。これは1回あたりの血液の拍出量がそれぞれ異なるためです。

血液の拍出量はトレーニングを重ねることで増えていきます。一般的にはトレーニングを続けていると心臓容積が大きくなり、左心室が拡大していくスポーツ心臓に変化していきますが、その結果、1回あたりの拍出量も多くなり、相対的に体力の向上とともに心拍数値は低くなってきます。しかし、先ほどのように、数値が高いから運動能力が低いとは限りません。もともと高回転型の心臓を持っている人もいるためです。他人の心拍数値は参考にならないということですね。

3. 有酸素運動領域

有酸素運動領域の中にはもちろんLSD心拍領域も含まれます。トレーニング強度を設定する場合はミドルペースの心拍強度を計算式で求めますが、ただ、グラフ上で、LSDからミドルペースに移行すべきポイントを心拍数の推移を解析して判断することは難しいので、ここではまとめて有酸素運動領域としています。

有酸素運動領域では、LSDを目的とする心拍領域に入っても最初は急激に乳酸が発生しないため乳酸の蓄積も穏やかです。グラフも緩やかな上昇曲線で変動していきます。次第にミドルペースの心拍領域に移行する頃から上昇曲線に変化が見られるようになります。一定ペースで上昇していた心拍数値の上昇率がわずかに高くなります。このあとしばらくするとAT領域を迎えますが、測定経験を重ねるうちにAT前の変化がわかるようになったらその時点で被測定者に教えてあげましょう。きっとトレーニングに役立つはずです。

4. AT心拍領域

有酸素運動領域から無酸素運動領域に切り替わるポイントが、AT(Anaerobic Threshold)心拍領域です。

この領域では次のようなことが行われています。運動強度が高くなると、エネルギー産生に使われていた酸素が、それに伴って発生した乳酸を除去するためにもより多く使用されるのでさらに供給量が増えていきます。ある一定水準を超えると消費量に対してその供給量が足りなくなってきます。すると、なおも運動を継続させるために、今度は酸素を必要としない無酸素性エネルギー産生システム(※注)に切り替わっていくのです。

この無酸素運動では、エネルギーがつくり出される時に酸素を必要としないため、エネルギー産生の上では直接心拍数には反映されなくなります。しかし、依然として乳酸を分解するのに多くの酸素が使用されることから酸素を運ぶ血液の運搬回数も増えるため、ますます心拍数は上昇します。この領域あたりから酸素の使用量も格段に増え、被測定者は肺が圧迫されて息苦しくなり、呼吸も荒くなってくるはずですから測定に際してはこれ以降は十分に注意して続けてください。乳酸による酸欠で頭痛が生じることもあると思います。

【ご参考】(※注)

無酸素運動の時は、筋線維内のミトコンドリアで血糖すなわちブドウ糖をエネルギーに変換させる際に酸素を必要とせず、副産物の乳酸は肝臓で分解しエネルギーとして再合成させて使っている。この時に酸素を必要とするのが有酸素運動。

5. 無酸素運動領域

AT心拍領域までが有酸素域で長時間運動できる範囲です。それ以降は無酸素運動。個人差はありますが、一般的にAT心拍数を越えるトレーニングの場合30分以上持続させることは困難です。しかし、運動能力が高くなると毛細血管もどんどん増えてそれに伴い酸素の摂取量も多くなって、それまでの同じ強度と比べるとはるかに楽に感じるようになってきます。これはすなわち、有酸素運動域が広くなることからAT値が最大心拍数値に近くなり、強度を上げても無酸素域での運動量が少なくなるということです。酸素の取り込み量が多くなると乳酸の回復力も強くなるのでAT近くでの継続時間も長くなります。乳酸を分解し除去して再利用するサイクルが早くなるためです。

グラフで無酸素域に切り替わるポイントを確認する場合は(※注)、有酸素運動から無酸素運動に切り替わるとエネルギー代謝に酸素を必要としないため心拍数には反映されず、今度は心拍数値の上昇率が低くなります。その上昇カーブが緩やかになったところを確認してみてください。個人差もあり、特に運動能力が低い人の場合は上述のように心拍推移が直線的に上昇する傾向にあるため、AT心拍領域の解析には注意が必要です。トレーニングで重要なポイントを占めるAT値を間違うと、心拍トレーニングそのものに影響が出ますから。

【ご参考】(※注)

無酸素域に切り替わるポイントのAT心拍領域はあくまで「領域」ですが、トレーニングで利用しやすいよう心拍数値で求めます。

解析にあたって、被測定者の体力レベルに応じてどの運動強度の段階でAT領域に達したかの判断は、心拍解析していくうえでは経験も必要となり難しい作業ですが一番重要な部分でもあります。一つの判断材料として、この負荷設定では上級者はおおよそ10分前後、中級者は10分に満たない場合もあり、初級者は10分前にオールアウトを迎えるケースもあります。参考にしてください。

6. 心拍測定データ

このファイルをお使い頂きますと、心拍の推移を自動でグラフ表示できます。また、測定データに基づき、その心拍数が被測定者の運動能力のどのレベル(運動強度)に該当するかを自動的に算出します。トレーニングの際の参考にしてください。

測定する人の状態を観察します

【ご使用方法】

  • ステップ 1

    まず、「安静心拍数」と「最大心拍数」のセルに、それぞれ該当する心拍数を上書き入力します。エンターキーを押しますと、「心拍可動域」が算出されます。

  • ステップ 2

    その後、実際の測定データを、上の表の「サンプル」各行の時間とスピードごとのセルに打ち込んでください。あらかじめ数式が埋め込まれていますので必ず上書き入力してください。順次、測定データごとの運動強度(%)の数値が下の表に自動算出されます。

  • ステップ 3

    サンプルは3人分に対応しています。ご使用にならないサンプル行は削除してお使いください。

  • ステップ 4

    測定データに基づきグラフが表示されますのでこれにより心拍の推移を解析します。

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